シンポジウム「気候変動とアクション 私が進める住まいのCO2削減」レポート

2月10日、たま気候みらいプロジェクトの一環として、シンポジウム「気候変動とアクション 私が進める住まいのCO2削減」を永山公民館ベルブホールで開催しました。当日はあいにくの大雪でしたが、約30人の方々に参加していただきました。

このイベントは、多摩市市制施行50周年記念市民提案事業として当協会が採択され約半年間にわたり実施してきた「たま気候みらいプロジェクト」の活動報告であると同時に、来年度以降への取り組みについて提案する場にもなれば、という趣旨で開催し、以下のような講演と事例報告、討論が行われました。当日使われた資料は、本ページの最後でPDF版を公開していますので、このレポートで関心を持たれた方はぜひご覧ください。

冒頭、多摩市長の阿部裕行氏はビデオメッセージの中で、「脱炭素社会への起爆剤として、(国が脱炭素の先導的な取り組みを行う地域を選定し補助する)『脱炭素先行地域』に挑戦していきたい」と意気込みを語り、このシンポジウムで「市民、企業、行政が一体となって取り組むために、幅広い意見が出ることを期待しています」とコメントを寄せました。

明星大学理工学部教授で熱環境工学などを研究している亀卦川幸浩氏は、「都市の温暖化と対策への展望」と題した基調講演で、都市ヒートアイランド現象は地球温暖化と異なる仕組みで生じていること(過去100年の東京の気温上昇3.3℃のうち2℃程度がヒートアイランドのせいだそう)、今後10年の地球温暖化対策の取り組みが世界の将来を左右することなどを語りました。

多摩市環境政策課 地球温暖化対策課長の市ノ瀬聡氏は、「多摩市の推進する地球温暖化対策」と題し、令和4年度は2050年を見据えた地域再エネ導入目標を策定したこと、多摩市エネルギービジョン(案)では2030年に2013年比でCO2排出量50%削減を目指すこと、またそのために市として太陽光発電システムと蓄電池の導入や断熱窓改修の補助を行っているほか、省エネ家電買い替えの補助なども行っていることも紹介しました。

多摩エネ協の高森郁哉理事は、半年弱の補助事業期間中に実施した「たま気候みらいプロジェクト」の取り組みについて報告したほか、脱炭素の活動を多摩ニュータウン再生推進の取り組みと連携させることなどで、危機を好機に変えていこうと提言しました。

多摩市前副市長・元環境部長で、当プロジェクトのアドバイザーも務めた浦野卓男氏は、「電気は買うより作るほうが安い!付けなきゃ損の太陽光発電~これでもまだ載せませんか?~」と題し、戸建て住宅オーナーが太陽光パネルを設置する際、金融機関が融資する分の債務保証を行政が支援することで、パネルを載せた月から「得になる」ことが分かりやすくなるような仕組みづくりを提案しました。

小野澤裕子建築設計事務所の小野澤裕子氏は、「省エネ・節エネ視点からのリノベーション事例」と題し、団地住居のリフォームで内壁に塗る断熱塗料が効果的だったことなどを報告し、断熱改修をすることが省エネ・節エネだけでなく、健康に長生きすることにも有効だと語りました。

一般社団法人団地再生支援協会・技術普及部会長、エステート鶴牧4・5元理事長の花牟禮幸隆氏は、「省エネ改修と合意形成」と題して、団地の躯体に関して住民に省エネ・節エネ意識を持ってもらうには体感することが重要であり、自分たちの団地の将来像を共有することが合意形成に有効だと語りました。

多摩エネ協の秋元孝夫理事(多摩電力合同会社執行社員)は、「再エネ導入で電気自動車に乗れる分譲団地」と題し、自身が住む分譲団地の外壁床下外断熱改修や電気自動車導入環境整備などの事例を報告したほか、「ネット・ゼロ・エネルギー団地」の未来図も提示しました。

参加者からは、「改修工事による住宅環境の改善や省エネ効果など有用な情報は広く管理組合に周知してほしい」「電気の地産地消、eモビリティ、断熱窓改修などのような技術が住民と地域の助けになることがわかった」「学びが多くあり、自分の自治体に持ち帰り環境政策課と市民(知人)と一緒に話し合いをしていきたい」などの意見や感想をいただきました。

最後に浦野氏が、「勝負の10年と言われているが、2030年まではあと8年。ここからは市民一人一人がアクションを起こさない限り、目標は達成できません。私たちの子孫が暮らせないような地球にしないために、今日のシンポジウムが今後のアクションにつながることを願っています」と総括しました。

【シンポジウムで使用された資料】
明星大学教授 亀卦川幸浩氏「都市の温暖化と対策への展望」
多摩エネ協・高森理事「たま気候みらいプロジェクトの報告と提言 気候変動対策を地域再生の好機に!」
浦野卓男氏「電気は買うより作るほうが安い! 付けなきゃ損の太陽光発電~これでもまだ載せませんか?~」
小野澤裕子氏「省エネ・節エネ視点からのリノベーション事例」
多摩エネ協・秋元理事「再エネ導入で電気自動車に乗れる分譲団地」

(公開の許可を得た資料から掲載。今後追加される可能性があります)

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